食事中には、できるだけ席を離れないように注意します。昔より食い抜け・食い逃げといって途中でトイレに立つたり、食後すぐに退席することを嫌いました。
テ−ブルの場合には、テ−ブルにひじを突いたり、頭・顔・体をいじらぬように注意します。

どんな場合でも食物を噛みながら談話することは絶対にさけ、人から話しかけられた場合には、軽く挨拶をして静かに飲み下して話に応ずる心得が必要となります。
物を食べるときに、口を開け閉めしてグチャグチャと噛む人がいますが、口を結んでいても噛めるものです。また噛む音も大きくしないで、静かに噛むように注意します。
テ−ブルの上の右にある物は右手で、左にある物は左手で取ります。蓋を取る場合にも、右側にある物は右手で蓋の糸底をつまみ、左手を食器のふちにそえて、手前から向こうに蓋を仰向けて開けそばに置きます。蓋は全部取り、食事が終わった時に全部蓋をします。

他人の食事に目をやったり又は見回したりせず、食器の音を立てないように注意をします。
箸は右手で中程を持ち、膝の上で左手を添えて右手を箸にそって回し、箸を持ち直します。箸包みのある物は左手で箸包みを取り膝の側に置きます。昔は食事の終わらない間は、箸は膳の淵にかけて置き、膳の内側に落とせば食事が終わったしるしと決めてありました。
刺身等の醤油を付けて食べる物は、小皿を左手で持ち、膝の上に持ってきて、刺身を取って食べます。野菜類と魚肉類が付けてある場合には、ご飯を食べてから、先ず野菜類を食べ、次に魚肉類を食べることとされていました。これは前の物の移り香が残らないようにとの配慮からです。吸い物が出たら、お椀を取り、そして汁・実を食べます。
同一の菜だけを一度に食べることを避けて、ご飯・汁・ご飯・菜というふうに食べます。また、箸を多く汚さないように注意し、箸先を汁で濡らしたりすることも嗜みのないこととされています。昔は箸先五分(1.5センチ)と教えました。

湯茶の掛からないご飯はかき込んで食べないように注意します。進められたものは一口でも必ず食べるようにします。

ご飯のおかわりを待つ間は必ずはしを置き、ご飯のお代わりをお願いする時はご飯を少し残しておき最後には一粒も残さないようにします。ご飯や汁などのおかわりを受けたときは、一旦テ−ブルの上に置いてから、さらに取り上げて食べます。俯いたままで黙々と食べることの無いように注意します。

その他すべて醜い所作や粗相の無いように注意して同席者に不快の感を起こさせないように心掛けます。

 


これだけは注意したいマナ−
昔から食事どきのはしのつかいかたによって、食事のマナ−を教えました。

  1. またもり・・箸でご飯をお茶碗の中に押し付けて食べることをいいます。
  2. 受け吸い・・椀汁やご飯のおかわりを受けたときには、テ−ブルの上に一度置いてからいただきます。
  3. 込み箸・・口の中に沢山の食物を箸で押し込むようにしていただくことをいいます。
  4. 移り箸・・日本料理を味わうのは本来、同じ種類、同じ味のものを出さないというのが原則です。一つの菜から他の菜に移る場合、前の菜の味や香りが他の器の菜に移るのを嫌い、ご飯や汁をいただいてから、次の菜に移ることを教えました。
  5. 空箸・・食べようとして一度その菜に箸をつけながら、それを食べないでそのまま箸を手元に引いてくることをいいます。
  6. 膳越し・・膳の向こうにあるものを、器を手に取り上げないで、そのまま箸で取り、口の方へ移すことをいいます。膳の向こうにあるものを膳の上を通って取ることも膳越しといい、必ず膳の脇を通るようにします。
  7. 袖越し・・右にある料理を左手で取り、あるいは左にある料理を右手で取ることをいいます。本来左にあるものは左手で、右にあるものは右手でという原則があります。蓋のあるもので右側のものは右手で取り、左側にあるものは左手で取ります。これは手を交差させることが無理な手の使い方となり、粗相を起こしがちになるからです。
  8. 惑い箸・・箸を物につけて、食べようかどうしようか惑うことをいいます。
  9. 箸なまり・・箸を取り、どの菜を食べようかと膳の上をあちこち見回すことをいいます。
  10. にらみ食い・・物を食べながら、茶碗の上からあちこち眺めることをいいます。
  11. 探り箸・・茶碗蒸など蒸し物をいただくときに、下の方に何かあるのではと、中を探ってみることをいいます。
  12. 舐り箸・・食べ物を口へ入れて箸先を深く舐るようにすることをいいます。
    「箸先一寸」あるいは「箸先五分」といい、汚れる範囲を限度と示しておりました。
  13. 諸おこし・・箸と器を一緒に取り上げることをいいます。
    箸を持つ手の方にある右側の汁などは、汁をいただくときには、箸を持ったまま器を右手で取ります。
  14. 犬食い・・肘を食卓につけて、食器の方へ口を近づけて食べることをいいます。
    このように回りの人が見て、汚いとか、目障りであるとか、心地悪いと感じることをしないことが必要です。